設立趣意書・沿革
設立趣意書
地震に関するわが国の技術は、関東大震災を始めとして数々の大震災を経験し、その都度学んで、より安全な構築物を創るための研究を重ねて今日にいたっている。その間建築に関する各専門分野で、耐震技術は飛躍的に進歩し発展を遂げてきた。とくに近年では、十勝沖地震での被害状況に学び新耐震設計法がまとめられ、また1995年に阪神・淡路地域を襲った兵庫県南部地震はさらに耐震性に関する研究を前進させた。その結果、建築物の耐震性能レベルの見直しが行われ、その評価基準が設定されるとともに、単に建築物の破壊を防ぐだけでなく、人々が住まう建築とまちの総合的な安全性の確保が重要視されるようになってきた。そしてこれに対応する技術も急速に進展し、非常に高度化し、かつ、多様化してきた。今日、各分野の専門家等の横断的な協力により、これらの技術を安全な建築と街づくりに生かすことが要請されている。
今後は、建物の破壊を防ぎ、人々の生命を守ることを主眼とするこれまでの耐震対策だけでなく、さらに地震後の人々の生活が守られるよう建物の機能維持を確保することが必要である。こうした観点に立って、地震に対応できる生活者の安全な住環境を実現するためには、建築やまちを構成している諸々の要素の知恵を集め、各分野相互の壁をとり除き、専門領域を越えて技術と知識の交流を図り、多角的な視点に立ってこれを集積し、活用することが必要である。
阪神淡路大震災の経験に基づいて結成され、建築物の総合安全性の追及を軸に活動してきた建築耐震設計者連合は、7年間の実績と経験を踏まえ、上記の要請に応えるため一段と活動を強化しなければならない。そこで、団体として法的責任をもって行動するため特定非営利活動法人(NPO)耐震総合安全機構に移行するとともに、建築設計の分野を越えて、広く門戸を開放し、関連分野の多彩な人材の参加を求めて、技術・知識の交流と集積を図ることとした。
「耐震総合安全機構」は、これらの人材の力を統合し結集して、安全な建築とまちの実現につとめる。このために、講演会、セミナー、出版等を通じて、地震に対する総合的な安全対策の重要性について社会の認識の向上に努めるとともに、社会や企業或いは個人の求めに応じて、建築と町の安全に関わる幅広い指導、援助、助言等を行う。